前回の記事「世界最古にして、機械式時計復活の嚆矢 ブランパンの歴史 年表・ヴィルレコレクション編」ではブランパンの年表と代表的なドレスウォッチである「ヴィルレ」コレクション、そして同社再興を手掛けた偉人ジャン・クロード=ビバーについて解説した。本稿では同社のアイコンモデルであり、現代ダイバーズウォッチの先駆けである「フィフティ ファゾムス」について取り上げていく。本来であるならば、本記事は「年表・ヴィルレコレクション編」と「フィフティ ファゾムス編」に分けずに投稿する予定であったが、フィフティ ファゾムスだけで、とてつもなく膨大な文章量になってしまったため、このような形をとった。それだけフィフティ ファゾムスという時計は奥が深い。
※本稿の写真はすべて「ISHIDA N43°」様の許可を得て撮影、掲載を行っています。また、写真は一部加工して掲載しています。
フィフティ ファゾムス

「ISHIDA N43°」様にて撮影
ブランパンを語る上では欠かせない、同社を象徴するダイバーズウォッチ。現代にあるダイバーズウォッチに備わっているような誤作動防止機能付きの回転ベゼルや耐磁性などを初めて搭載した時計であるため、近代ダイバーズウォッチの“祖”、“原点”と呼ばれている。
現在では、オーソドックスなステンレスケースモデル以外にもチタンケースモデルやゴールドケースモデルも展開され、また、通常モデルだけではなく、フライバッククロノグラフモデルや8日間のパワーリザーブとトゥールビヨンを搭載した「フィフティ ファゾムス トゥールビヨン 8デイズ」。フライバッククロノグラフにムーンフェイズとコンプリートカレンダーを追加した「フライバッククロノグラフ コンプリートカレンダー」、さらには機械式水深計とレトログラード式の減圧停止用5分カウントダウンタイマーを搭載したプロダイバーモデル「Xファゾムス」などのコンプリケーションモデルもラインナップされている。2013年にはマリンアクティビティ向けとして1956年に発表された「フィフティ ファゾムス バチスカーフ」が復活。こちらも「フィフティ ファゾムス」同様、豊富なバリエーションが用意されている。
記念モデルや限定モデルも多数製作されており、後述する50周年記念モデルや「MIL-SPEC」「ノー ラディエーション」以外にも、1000mの防水性とヘリウムガス・エスケープバルブを備えたプロダイバーモデル「フィフティ ファゾムス 500ファゾムス」、”Aqua Lung(アクア・ラング)”の名を復活させたトリビュートモデル「フィフティ ファゾムス アクア・ラング トリビュート」、フィフティファゾムスの開発に大きく貢献したフランス海軍特殊潜水部隊へのトリビュートモデル「フィフティ ファゾムス オートマティック “フロッグマン”」、 1960年代末にドイツ市場向けに発売されたフィフティ ファゾムスの復刻モデル「フィフティファゾムス バラクーダ」などが限定モデルとして発売された。
2023年にはフィフティ ファゾムス70周年を記念し、「フィフティ ファゾムス70周年記念 ACT1」、「ACT2:テックゴンベッサ」、「ACT3」の3つが発売され、さらに、スウォッチも70周年を祝福し、スウォッチとブランパンとのコラボレーションモデル「バイオセラミック スキューバ フィフティファゾムス」を発表。「ARCTIC OCEAN(北極海)」「PACIFIC OCEAN(太平洋)」「ATLANTIC OCEAN(大西洋)」「INDIAN OCEAN(インド洋)」「ANTARCTIC OCEAN(南極海)」と世界に存在する5つの海の名が付けられた5種類のモデルが展開された。
去年2024年にはケースサイズを42.3mmにサイズダウンさせた新しいフィフティ ファゾムスが発表された。ケースサイズだけではなく、中抜きされたローター、網目模様のラバーストラップなど、栄えある初代モデルをリスペクトしたモデルとして大きな注目を集めた。
同社のフラグシップモデルとして、業界にその存在を誇示するフィフティ ファゾムス、今なお、多くのファンを持つ同コレクションの歴史は古く、その始まりは、今から70年以上前に遡る。
始まり
フィフティ ファゾムスの歴史は1950年、ブランパンCEOであったベティ・フィスターの甥であるジャン=ジャック・フィスターが新しくCEOに就任したことから始まる。ダイビング愛好家であった彼は、ダイビング中に潜水時間の経過を誤り、命を危険に晒した経験から、深海でも正確な時間を確認できる潜水用腕時計の必要性を感じ、新しいダイバーズウォッチの製作に取り組んだ。
時を同じくして、奇しくもフランス海軍のロベール・“ボブ”・マルビエ大尉とクロード・リフォ中尉の二人がフランス海軍特殊潜水部隊を新設し、隊員の装備として新しい潜水用の腕時計を探していた。しかし、この年代は航空技術が大きく発展し、多くの時計メーカーがパイロットウォッチに注力していた。そのため、水中で使用することが目的のダイバーズウォッチの開発に消極的であり、彼らの要求を満たすような時計は中々見つからなく、時計探しは難航していたのであった。
そんな中、フランスの潜水機器メーカーである当時のスピロテクニック社(現アクアラング社)からブランパンを紹介され、二人はフィスターと出会う。
歴史的傑作の誕生
共通の目的を持っていた両者は共同で新しいダイバーズウォッチの開発に取り掛かった。マルビエ大尉とリフォ中尉がフィスターに要求したのは高い防水性に加えて、水中でも瞬時に時間を読み取ることができる視認性の高い文字盤と潜水機器から発生する磁気を防ぐ耐磁性、そして潜水開始時間を把握できる目盛り付きの回転ベゼルを備えていることであった。そして1953年、記念すべきフィフティ ファゾムスの初代モデルが誕生した。名前はイギリスの劇作家であるウィリアム・シェイクスピアの戯曲「テンペスト」に登場する精霊エアリエルが第一幕で歌う劇中歌と当時のダイバーの限界水深が50ファゾムス(=約91m。ファゾムとはヤード・ポンド法における水深単位)であったことから取られている。
初代フィフティ ファゾムスは2人の要求を十二分に満たすものだった。ブラックの文字盤とそれに映える、夜光塗料が塗布されたハイコントラストで大きめのホワイトインデックスと針、ドーム状のプレキシガラス製回転ベゼルを備え、耐磁性確保のために軟鉄製のインナーケースを内蔵。ムーブメントは水中でゼンマイを巻き上げなくてもいいよう自動巻きを採用し、リュウズはダイバースーツに引っかからないよう小さくしている。加えて以下の構造を備え、特許を取得。
・ダイビング中にベゼルが誤って回転するのを防ぐため、押しこまなければ回転しないロック機能が施された回転ベゼル
・不注意によってリュウズが引き出されたままでも防水性を確保できるよう、2つのOリングを備えた二重密閉構造のリュウズ
・ねじ込み式の裏蓋によって、裏蓋に使用するOリングがねじれて防水性を落とすことがないよう、裏蓋を中蓋と金属リングに分割し、中蓋をはめ込んだ後、中蓋外周にあるOリングを金属リングで締め上げて固定させる独自の裏蓋構造。
1932年にオメガが発表した「マリーン」や1936年にパネライがイタリア海軍の要請により製作した「ラジオミール」はダイバーズウォッチの先駆けと言っていい歴史的なモデルであるが、両者とも現代にあるダイバーズウォッチのような安全性や機能性はほとんど無かった。現代のダイバーズウォッチはISO(国際標準化機構)が1982年に制定したISO6425によって、防水性はもちろん、耐磁性や視認性、誤作動防止機能が備わった回転ベゼルの搭載などが厳格に定められている。ISO6425が現在の形になったのは1996年、前述したようにフィフティ ファゾムスの初出は1953年、つまり、ISO6425が制定される40年以上前にフィフティ ファゾムスは現在のダイバーズウォッチとほぼ同等の性能を備えていたのだから驚きだ。ISO6425はフィフティ ファゾムスに倣って作成されたのか?もしそうだとしたら、筆者はこの時計にロマンを感じずにはいられない。
ちなみにフィフティ ファゾムスが誕生した同じ年にロレックス「サブマリーナー」が開発された(正式に発表されたのは1954年)。どちらもほぼ同年に開発・発表されたダイバーズウォッチであるが、初代サブマリーナーはまだ逆回転防止ベゼルではなく、両方向回転ベゼルを採用しており、安全性にやや欠けている面があった。よって、ベゼルの誤作動防止機能を搭載したフィフティ ファゾムスの方が“現代ダイバーズウォッチの原点”と呼べる。なお、ねじ込み式のリュウズはロレックスの特許技術のためフィフティ ファゾムスには採用できなかった。
フランス海軍はフィフティ ファゾムスを正式に採用。その後、フィフティ ファゾムスは軍だけにとどまらず、民間のダイバーたちにも注目され、アクア・ラング社(旧スピロテクニック社)からダイビング機器と共に販売された。なお、アクア・ラング社から販売されたフィフティ ファゾムスはブランパン(BLANCPAIN)とアクアラング(Aqua Lung)のダブルネームとなっている。さらに1956年、フランスの海洋学者であり、ダイバーでもあるジャック=イヴ・クストーが監督したドキュメンタリー映画「沈黙の世界」の撮影で使用し、フィフティ ファゾムスは世に広く知れ渡ったのである。また同年、派生モデルの「フィフティファゾムス バチスカーフ」が誕生。名前の由来はスイスの学者、オーギュスト・ピカールが開発した潜水艇から取られた。プロダイバー向けではなく、マリンアクティビティ向けのモデルとして製作されたため、初代フィフティ ファゾムスのケース径が42mmに対し、バチスカーフは37mmと小振りで着用しやすいケースサイズであった。
世界各国での採用
フィフティ ファゾムスはその高い性能からフランス海軍にだけにとどまらず、世界各国の軍隊にも採用された。特に有名なのはアメリカ海軍の「MIL-SPEC1」と西ドイツ海軍の「BUND No Rad」だろう。ここからはこの2つについて解説していこう。
アメリカ海軍に採用された「MIL-SPEC」
ブランパンは1957年から1958年にかけて海軍のミルスペック(=軍用規格)を満たすモデル「フィフティ ファゾムス MIL-SPEC1」を開発した。最大の特徴は6時位置に設けられた2色の水密性インジケーターであり、不注意やアクシデントによって時計内部に液体が入った場合、水密性インジケーターの白色部分が赤くなることで異常を知らせる仕組みとなっている。アメリカ海軍は58年初頭に水中での任務に使用できるダイバーズウォッチを決めるため、この「MIL-SPEC1」の性能テストを行った。結果、「MIL-SPEC1」はアメリカ海軍が設けた基準を全てクリアし、アメリカ海軍は「MIL-SPEC1」の採用を決定。611本の納入が決まり、海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」の隊員に提供された。この性能テストは「MIL-SPEC1」だけではなく、様々なメーカーのダイバーズウォッチも同時にテストしたが海軍が定める基準を全て満たしたのは「MIL-SPEC1」だけであった。その後、1960年初頭に磁気機雷対策として非磁性合金のケースと耐圧性を高めるためにチタン製の裏蓋を備えた「MIL-SPEC2」が誕生した。特筆すべき点としては、アメリカ海軍に納品した「MIL-SPEC2」に記されているブランド名は「ブランパン」だけではなく、「トルネク・レイヴィル」と銘打ったモデルも存在するということだ。当時、フィフティ ファゾムスをブランパンのアメリカ代理店であるアレン・V・トルネクを通じてアメリカ海軍に納入していた。しかし、バイ・アメリカン法(米国政府が調達する備品は品目別に一定比率以上、米国製でなければならない法律)により、サプライヤーが限られていたため、スイスメーカーであるブランパンの時計を調達するのは難しかった。そこで、アレン・V・トルネクは自身の「トルネク」と当時のブランパンの社名である「レイヴィル」を組み合わせた新会社「トルネク・レイヴィル」を設立し、その名を使うことで制約を回避した。トルネク・レイヴィル銘のMIL-SPECは「TR-900」と呼ばれ、1000本ほどしか製造されなかったため、現在では希少価値が非常に高く、コレクター垂涎のアイテムとなっている。
ドイツ海軍に採用された「BUND No Rad」
1960年代初頭に時計のインデックスや針などの夜光塗料に使用されてきたラジウムが放射性物質として人体に有害であると発表された。これを受けて、ブランパンはダイバーが安心して使用できるよう、自社の時計が放射性物質を一切使用していないことを明示するために、文字盤の6時位置に黄色の下地と放射性を示す赤いハザードシンボルにバツ印を付け、「NO RADIATION(放射性物質未使用)」と表記した「フィフティ ファゾムス RPG1」を製造した。現在「BUND No Rad」の名称で呼ばれるこのモデルは、1960年半ばに、潜水機器の専門商社であるバラクーダ社が仲介業者となって、西ドイツ海軍に採用、海軍特殊部隊である「海軍戦闘水泳中隊」の隊員に支給された。「BUND No Rad」という名称は裏蓋に刻まれている「BUNDESWEHR(ドイツ連邦軍)」からとられている。後に日付表示機能を追加した「フィフティ ファゾムス RPGA1」も製造された。1970年代には、西ドイツ海軍からの要請により、ブランパンは「フィフティ ファゾムス 3H BUND」を製作。「3H」とは三重水素(=トリチウム)のことで、その名の通り、インデックスと針の夜光塗料にトリチウムを使用しており、文字盤の6時位置には「3H」と表記されている。また、リブリーザーを用いての時間単位の長時間潜水を目的としているため、ベゼルには従来の分単位刻みの目盛りではなく、ゼロ位置を示す逆三角形のみしか印字されていなかった。
フィフティ ファゾムスは、ドイツ、アメリカ以外にもスペイン、イスラエル、パキスタンの海軍にも採用され、当時、いかにその高い性能で世界各国の軍隊の注目を集めていたかが窺える。この2つの傑作は、2017年に「フィフティ ファゾムス MIL-SPEC」、2021年に「フィフティ ファゾムス ノー ラディエーション」として、世界限定500本で復刻モデルが発表され、さらに、それぞれの発表年に行われたチャリティオークション「オンリーウォッチ」においてユニークピースモデルも出品された。
このように、輝かしい栄光を飾ったフィフティ ファゾムスであるが、1970年代後半、スイス時計業界を震撼させたクォーツショックによってブランパンは休眠状態に追い込まれ、さらには生みの親であるジャン=ジャック・フィスターも経営から退いてしまった。これによりフィフティ ファゾムスは、およそ20年もの間、世の中から姿を消すことになるのであった。
復活、そして象徴に
フィフティ ファゾムスの名が再び世に登場したのは、今から約30年前になる。1982年、クォーツショックにより休眠状態であったブランパンを、当時SSIH(後のスウォッチグループ)の社員であったジャン=クロード・ビバーがフレデリック・ピゲ創業者ルイ=エリゼ・ピゲの息子であるジャック・ピゲと共に2万1500スイスフランで買収し、同社を再興させた。再興後の1998年、フレデリック・ピゲがGMT機能搭載ムーブメントを開発したのをきっかけに、ブランパンは“陸海空”をコンセプトにしたコレクション「トリロジー」を発表。その「海」にあたるモデルとして高級感のある立体的な浮き彫りの数字を施した金属製ベゼルと約100時間のパワーリザーブを誇るフレデリック・ピゲ社製自動巻きムーブメント「Cal.1151」を備えた「トリロジー フィフティ ファゾムス」が製作された。「フィフティ ファゾムス」の名が約20年の時を経て、現代に蘇ったのである。さらに9年後の2002年にはビバーが同社CEOから退き、マーク・A・ハイエックがブランパンCEOに就任。ダイバーであったハイエックはブランパンの歴史的モデルであるフィフティ ファゾムスを継承すべく、2003年に50本限定で外装を初代モデルに寄せ、回転ベゼルにサファイアクリスタルを採用した「フィフティ ファゾムス 50周年記念モデル」を発表した。そして、これを皮切りに2007年、レギュラーモデルとなる「フィフティ ファゾムス オートマティック」が誕生したのである。以降、フィフティ ファゾムスは同社のフラグシップモデルとして様々なラインナップを展開。多くの愛好家を惹きつけることになる。
フィフティ ファゾムス オートマティック

「ISHIDA N43°」様にて撮影
駆動方式:自動巻き ケース素材:ステンレススティール/ソリッドバック
ケース径:45mm 厚さ:15.5mm 防水性:300m防水
ムーブメント:Cal.1315 パワーリザーブ:約120時間
振動数: 2万8800振動/時 石数:35石
2007年に発表されたフィフティ ファゾムスのレギュラーモデル。全体的なデザインや磁気対策用の軟鉄製インナーケースなど、設計は初代モデルを踏襲しているが、ケースサイズはダイバーズウォッチの機能性と高級時計の審美性、両方を兼ね備えさせるため、初代モデルよりも3mmほどサイズアップされた45mmとなっている。しかし、スペックの方は現代に合わせて進化しており、300mの防水性に、ねじ込み式リュウズや逆回転防止ベゼルを備え、加えて、ストラップは耐久性を高めるため、一般的なバネ棒ではなく、六角形の穴があいた特殊なバーで固定するようになっている。レトロモダンなデザインでありながら、ダイバーズウォッチとしての機能性は十分だ。ベゼルはプレキシガラスではなく、50周年記念モデル同様、傷が付きにくいサファイアクリスタルを採用。特徴的なのは、ベゼルがドーム状に膨らんでいることであり、これは、見た目を立体的に見せるだけではなく、ドーム状にすることでベゼルを割れにくくするというハイエックのアイデアによるもの。この当時、サファイアクリスタルを立体的にくり抜くのはコストがかかり、非常に難しかった。また、ベゼルには初代モデルにはなかった15分までの目盛りが追加されている。
搭載ムーブメントは自社開発の「Cal.1315」。ベースムーブメントになったのは、同社の「ヴィルレ 8デイズ マニュアル」に搭載されている、3バレルによる8日間のパワーリザーブと耐磁性に優れたチタン製テンプを備えた手巻きムーブメント「Cal.13R0」だ。駆動方式を手巻きから自動巻きに改修し、衝撃による等時性低下を防ぐため、軽量なチタン製テンプを比重の重いベリリウム合金の一種であるグリュシデュール製のフリースプラングテンプに置き換えている。チタン製テンプの高耐磁性の恩恵を受けられなくなってしまうが、軟鉄製の耐磁性インナーケースを備えることで耐磁性を失うデメリットを打ち消しているのだ。パワーリザーブは約5日間。ベースとなった「Cal.13R0」と比べ、3日ほど減少してしまっているが、それでも十分過ぎるほどであり、ダイバーズウォッチにとって最適なムーブメントとなっている。ストラップはセイルキャンパスストラップとステンレスブレスレットの2種類が用意されている。

「ISHIDA N43°」様にて撮影
駆動方式:自動巻き ケース素材:チタン/シースルーバック
ケース径:45mm 厚さ:15.4mm 防水性:300m防水
ムーブメント:Cal.1315 パワーリザーブ:約120時間
振動数: 2万8800振動/時 石数:35石
2017年に発表された「フィフティ ファゾムス オートマティック」のチタンケースモデル。ケース全体にはサテン仕上げが施され、特徴的なブルーのサンバースト文字盤はインデックス内周に施された放射状のヘアラインと外周に施された同心円状のヘアラインにより、”水中に差し込む光”を思わせるような、鮮やかな輝きを放つ。搭載ムーブメントは、上述の「フィフティ ファゾムス オートマティック」と同じ「Cal.1315」を採用しているが、ニヴァロックス製のヒゲゼンマイを耐磁性に優れたシリコン製に変更し、軟鉄製のインナーケースを除去。これにより、重量はチタンケースと相まってステンレスモデルよりも大幅に軽量化され、同時にケースバックをシースルーバック仕様にすることが可能となった。ムーブメントには控えめで品のある装飾が施された受け板とNAC(プラチナ合金)コーティングが施されたモダンな18Kゴールド製ローターを採用。シースルーバックの裏蓋からそれらを鑑賞することができ、オリジナルを踏襲したステンレスモデルと比べると、高級感のある仕様となっている。ちなみに、この「Cal.1315」の仕様は2013年に発表された「フィフティ ファゾムス バチスカーフ」が最初である。ストラップはセイルキャンパスストラップ、チタンブレスレット、NATOストラップの3種類が用意されている。
フィフティ ファゾムス バチスカーフ フライバッククロノグラフ

「ISHIDA N43°」様にて撮影
駆動方式:自動巻き ケース素材:ブラックセラミックス/シースルーバック
ケース径:43.6mm 厚さ:15.25mm 防水性:300m防水
ムーブメント:Cal.F385 パワーリザーブ:約50時間
振動数:3万6000振動/時 石数:37石
2014年に発表されたバチスカーフ フライバッククロノグラフのセラミックケースモデル。軽量でエッジの効いたセラミックケースには高級感のあるサテン仕上げが施されており、ベゼルも同じくセラミックス製で、数字と目盛りにはリキッドメタルを象眼させている。共に高硬度かつ、高い耐傷性を持つ素材のため、細かな仕上げを施すことが可能となっており、セラミック部分はポリッシュ、数字と目盛り部分はサテン仕上げが施されている。この技術は同じスウォッチグループ傘下のブランドであるオメガの手法としても有名だ。
シースルーバックの裏蓋はダイバーズウォッチの定番である、ねじ込み式のスクリューバックではなく、はめ込み式のスナップバックを採用。高硬度のセラミックケースにねじ山を作るのは難しいため、高い防水性を持つスクリューバックは採用できなかった。しかし、セラミックスはステンレスのように圧力によって歪まないので、スナップバックでも問題無く、また、それにも関わらず、防水性はしっかりと300mを確保している。
搭載ムーブメントはブランパン初のハイビートムーブメントである「Cal.F385」。「フィフティ ファゾムス クロノグラフ フライバック」に搭載されているムーブメント「Cal.F185」の進化版であり、フレデリック・ピゲの薄型手巻きクロノグラフムーブメントとして知られる「Cal.1180」やヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ クロノグラフ(Cal.1137)」、オーデマ・ピゲ「ロイヤルオーク クロノグラフ(Cal.2385)」、ブレゲ「マリーン クロノグラフ 3460(Cal.576)」 などのベースムーブメントにもなった「Cal.1185」と同じ流れをくむムーブメントである。「Cal.F185」と比べるとムーブメントの径と厚さが大きくなっているが、その分、香箱が大型化され、パワーリザーブは約50時間まで延長された。クロノグラフはダイバーズウォッチに相応しい、精密性と耐衝撃性に優れた垂直クラッチ式とコラムホイールで作動するフライバッククロノグラフで、振動数3万6000振動/時のハイビートにより、0.1秒単位の計測が可能となっている。加えて、シリコン製のひげゼンマイとゴールド製の調整ネジを設けたチタン製フリースプラングテンプを採用することで、高耐磁性を実現。極めて高い潜在能力を持ったモデルとなっている。ストラップはセイルキャンパスストラップとNATOストラップの2種類を用意。
時計は、まず歴史から
“革新こそ伝統”を理念に掲げるブランパン。創業から現在に至るまで多くの傑作を産み出してきたが、フィフティ ファゾムスはその理念をより強く体現しているタイムピースと言っていいだろう。恥ずかしながら、筆者は時計マニアを名乗っておきながら、フィフティファゾムスについてあまりよく知らなかった。なので、今回この記事を書いて、フィフティファゾムスがこれほどの傑作であることに感銘を受けるばかりだ。やはり時計の歴史を知るのは楽しい。今まで関心がなかった時計にロマンと探求心を掻き立たせるのだから。
Special thanks!
本稿で掲載されている写真は、「ISHIDA N43°」様で撮影しました。
札幌市大通に店舗を構える同店は道内唯一のブレゲ、ブランパン、グラスヒュッテ・オリジナルの正規販売店。その他にも、オメガ、カルティエ、IWC、パネライ、ウブロ、ノルケインなど、幅広いブランドを取り扱っており、気品と落ち着きのあるラグジュアリースペースで、心ゆくまで時計選びをお楽しみいただけます。
撮影に協力してくださった「ISHIDA N43°」様、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。