時計のマニアな知識 第一弾 時計規格 前編

時計用語

計の個性を彩る要素としてその存在が注目されている時計規格。それらはブランドや製造地、購入者を守るために作られたものであり、古くから情熱と誇りが注がれてきた。本稿初回となる「時計のマニアな知識 」。第一弾は時計規格について、前編と後編に分けて解説する。前半は専門機関が行う規格、後半はブランドが独自に行う規格について取り上げていく。是非、ご一読いただきたい。

クロノメーター(COSC)

国際標準化機構(ISO)が定める「ISO3159」の基準を満たした時計に与えられる認証。時計規格の中で最も代表的な認証であり、由緒あるものだ。

同認証及び、「ISO3159」の基準はスイス公式クロノメーター協会(COSCコスク:コントロール・オフィシャル・スイス・デ・クロノメーター)が行う検定に準拠している。検定は時間の遅れ進み、つまり、ムーブメントの精度に対して行うもので、合格した時計は”高精度時計”として「クロノメーター」を名乗ることができる。後述するように、クロノメーターの検定機関は同機関以外にも存在するが、主流なのはこのCOSCであり、現代において、一般的に「クロノメーター」というと同機関の検定をクリアしたものを指す。古くから「マリン・クロノメーター」などの”高精度時計”を意味するこの言葉は、諸説はあるが、17世紀のイギリスの科学者ウィリアム・デラムが自身の著書で用いたのが最初だと言われている。

COSCは1940年代に腕時計の生産数が増加し、市販される時計に対して、新しい精度基準が求められるようになったことが発足のきっかけだ。これに応える形で1951年、前身である時計歩度公認検定局(B.O)が設立され、1973年にスイス時計産業連盟(F.H.S)とベルン、ジュネーブ、ヌーシャテル、ゾロトゥーン、ヴォーの5州によって、組織再編され、現在のCOSCとなった。現在はスイス・ラ・ショー・ド・フォンに本部を置き、ビエンヌ、ル・ロックル、サンティミエの3か所に検定所を設けている。

同機関のクロノメーター認証は時計規格の中でも圧倒的に高いシェアを誇り、多くの時計がその認証を受けている。設立当初の認定ムーブメントは20万本程度であったが、2004年には100万本、2012年には170万本、去年2024年には240万本以上がCOSCの認定を受け、その取得数は年々増加傾向にある。このような第三者機関は中立性が重要視されるが、同機関は非営利団体であるため、株主やブランドに影響されることはなく、加えて、スイスの適合性評価機関であるスイス認定サービス(SAS)による監査と再認可を受けているため、常に公正な基準が保たれている。

なお、クォーツムーブメントが発明されるまで、イギリスのキュー、フランスのブザンソン、スイスのジュネーブやヌーシャテルといった世界各地の天文台で各ブランドがムーブメントの精度を競い合う「天文台クロノメーター・コンクール」というものが開催されていた。同コンクールに出品されるムーブメントは市販向けではなく、入賞を目的として製作されたものが大半であったが、入賞した一部のムーブメントは市販向けに製品化された。こういった時計の文字盤には「OBSERVATORY CHRONOMETER(天文台クロノメーター)」と表記されているが、これは”コンクールで入賞した高精度ムーブメント”ということであり、公的機関が認定する”製品規格”としてのクロノメーターとは意味合いが異なるので注意。ちなみに、クロノメーター検定は1776年、マリン・クロノメーターを量産する際、量産品として一定の精度と品質を維持するために行われたのが最初である。

多くの時計が認定されているCOSCクロノメーターであるが、その代表格と言えば、ブライトリングロレックスと言っていいだろう。1999年にブライトリングは「100%クロノメーター化」を宣言。時計業界初となるこの宣言であったが、見事、初志貫徹し、2001年以降、同社の全モデルがクロノメーターに認定されている。その点で言えば、ロレックスも同様だ。同社は1910年にビエンヌ時計学校(B.Oの前身)から腕時計として初めてクロノメーター認定を受けて以来、精度に対するこだわりを貫いており、全てのモデルにクロノメーターを取得させている。さらに2015年からは自社規格「高精度クロノメーター」を制定。クロノメーター取得後、自社内でさらに厳しい検査にかけるなど、徹底的な精度追求を行なっている。チューダーボーム&メルシエロンジンなど、比較的手の届きやすい価格帯のクロノメーターモデルも必見だ。

検定条件

検定対象はスイス製ムーブメントのみ。機械式ムーブメントだけではなく、クォーツムーブメント、クロック(置き時計)、懐中時計も対象。

検査内容

検定対象のムーブメントに仮のダイアルと秒針、巻き芯を取り付ける。

機械式時計は3つの温度(38℃、23℃、8℃)の下、5つの姿勢(12時位置下、右、左、文字盤上、文字盤下)で15日間、クォーツウォッチは環境によって振動数が変化するため、3つの温度と4つの湿度の下、1つの姿勢で13日間にわたり、精度を測定。

認定基準

平均日差:-4~+6秒以内

同じ姿勢と温度で2日間測定、その日差の間隔((にっ)較差(かくさ) )の平均値:2秒以内

最初の10日間の5つの姿勢の日較差の最大値:5秒以内

水平姿勢時と垂直姿勢時の日差の間隔:-6秒~+8秒以内

最大姿勢偏差:10秒以内

温度が8℃の時と温度が38℃の時の温度係数:-0.6秒~+0.6秒

復元差:-5秒~+5秒

C.O.S.C取得モデル(C.O.S.C認証のみを取得)

チューダー「ブラックベイ」
(Cal.MT5602)

ロンジン「ロンジン レジェンドダイバー」
(Cal.L888.6)

ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ41」
(Cal.01)

ボーム&メルシエ「クリフトン ボーマティックCOSC」
(Cal.ボーマティックBM13-1975A)

ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール」
(Cal.UN-118)

チューダー ブラックベイ

2012年に発表された、チューダーのフラグシップモデル。

1954年に発表された同社初のダイバーズウォッチ「サブマリーナー」がベースである。写真は2019年に発表された、2代目ブラックベイ(Ref.79230)。COSCの認定を受けた、同社初となる自社製ムーブメント「Cal. MT5602」を搭載しており、文字盤の6時位置には公式認定クロノメーターを意味する「OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER」が表記されている。

ドイツとフランスのクロノメーター認証

さて、前述したように、クロノメーター認証はスイスのCOSCが主流であるが、ドイツ、フランスにもクロノメーター認証が存在する。それがドイツクロノメーターブザンソン天文台クロノメーターだ。いずれもマイナーな認証であるが、近年、取得するブランドが現れ、知名度は上がりつつある。検査内容や認定基準はCOSCとほぼ変わらないが、COSCがムーブメントに仮の文字盤と針、巻き芯を付けて検定を行うのに対し、ドイツクロノメーターとブザンソン天文台クロノメーターはケーシングをした製品状態で検定を行う。COSCの検定で取り付けられる針などの部品は製品時に取り付けられるものではなく、あくまで検定用の“仮”の部品であるため、検定時と製品時では精度に誤差が生じる場合がある。ケーシングをした製品状態で検定を行うことで、より正確な精度を測定することができるというわけだ。故にCOSCよりも認定難易度は高い。

ドイツクロノメーター

ドイツのクロノメーター認証。DIN(ドイツの工業規格)8319を認定基準とし、検定はグラスヒュッテ天文台で行う。検定対象はドイツ時計のみだ。同天文台はドイツのマリン・クロノメーター検定機関であったが、第二次世界大戦後に閉鎖され、廃墟と化していた。しかし、2006年にドイツの老舗宝飾店「ヴェンぺ」が所有し、同認証の検定機関として復興。当初はヴェンペが展開するオリジナルブランドなど一部のブランドでしか取得していなかったため、認知度は低かったが、ドイツのビッグネームであるグラスヒュッテ・オリジナルが同認証を取得し、広く知られるようになった。

ドイツクロノメーター取得モデル

ヴェンペ「ツァイトマイスター クロノグラフ トリプルカレンダー ムーンフェイズ
(Cal.ETA7751)

グラスヒュッテ・オリジナル「セネタ・クロノメーター」
(Cal.58-01)

ブザンソン天文台クロノメーター

フランスのブザンソン天文台によるクロノメーター認証。フランス工業省管轄の時計技術センター「CETEHORセテオール」が検定を受け持っており、かつてロジェ・デュブイやアラン・シルベスタインがこの認定を受けていた。しかし、ロジェ・デュブイはクロノメーター取得をCOSCに移行し、アラン・シルベスタインは事実上の消滅。また、同認証はCOSCと比べると検定の受け入れ可能数が極めて低いため、取得ブランドは減少傾向にあった。しかし、2007年に独立時計師カリ・ヴティライネンが製作した「オブセルヴァトワール」のクロノメーター検定を同天文台に依頼したことをきっかけに復興。以降はフランスのクロノメーター機関として検定を再開している。同認証の最大の特徴は他国の時計も検定対象となっていることだ。これまではCOSC やドイツクロノメーターのように自国製の時計でしかクロノメーターを名乗ることができなかったが、同認証の復興により、多くの時計がクロノメーターを名乗る機会が生まれたのである。

復興後のブザンソン天文台クロノメーターを取得したモデルで有名なのはタカノ「シャトーヌーベル・クロノメーター」だろう。独立時計師 浅岡肇 氏が代表取締役を務める「東京時計精密」の手によって復活を遂げた幻の国産時計ブランド「タカノ」。ファーストモデルとして発表された「シャトーヌーベル・クロノメーター」は同認証を初めて取得した国産時計として、大きな話題を呼んだ。

今後、取得モデルの増加が予想できる注目すべき認証と言っていいだろう。

ブザンソン天文台クロノメーター取得モデル

■ロジェ・デュブイ「オマージュ」
(Cal.RD57)

アラン・シルベスタイン「クロノバウハウス LWO5100」
(Cal.レマニア5100)

ペキニエ「ロワイヤル サフィール ペルラージュ 18KRGモデル
(Cal.EPM01)

タカノ「シャトーヌーベル・クロノメーター」
(Cal.90T)

ジュネーブ・シール

スイス・ジュネーブ州の技術規格法24条に基づく要件をすべて満たした時計に与えられる認証。その歴史は古く、現存する時計規格の中では最古の認証だ。かつてはジュネーブ時計学校が同認証の運営を行っていたが、2008年からは同州に本部を置く財団「タイムラボ」が運営を担っている。

古来より、ジュネーブ製時計は高品質で高い審美性を備えた時計として、世界中の王侯貴族を魅了してきた。しかし、どの時代においても”芸術品”に贋作は付き物であり、低品質の時計をジュネーブ製と偽り、法外な価格で売りつける悪徳商人も現れるようになった。ジュネーブ製時計の価値に大きな損害を与えかねないこの問題を解決すべく、ジュネーブは伝統的なジュネーブ製時計の名誉と製造技術を守るため、1886年に生産地や品質保証の手段として「ジュネーブ」の名を乱用することを禁止し、「時計の任意検査に関する法律」を可決した。そこで施行されたのが「ジュネーブ・シール」である。

同認証の検定はジュネーブ州技術規格法25条に定められた基準に沿って行われる。評価対象は大きく分けると精度、機能性、審美性の3つであるが、とりわけムーブメントの審美性に対して重きを置いている。地板、受け、歯車、脱進機、穴石、ネジなどムーブメントを構成するすべての部品が同認証の対象となり、指定された加工や装飾、仕上げなどを施すことが要求され、その項目は細かく分けると30以上にまで及ぶ。

同認証は元々、審美性のみを対象としたものであった。前述したように現在はジュネーブ州技術規格法25条の基準に沿っているが、それ以前の基準となっていた技術規格法24条には25条のように精度と機能性に関しては記載されていなかったため、それらは評価の対象外だったのである。これが原因で、ジュネーブ・シールを取得した時計は同時に高精度の証である「クロノメーター」も名乗れた曖昧な時代もあったという。

2012年、現在のジュネーブ・シールが準拠しているジュネーブ州技術規格法25条が発布され、現体制がスタート。ムーブメントの審美性だけではなく、時計の本質である精度や機能性も評価対象とした認証として一新された。また、「タイムラボ」が運営を引き継いでからはCOSCと提携し、ジュネーブ・シールの検定を受けるムーブメントは事前にCOSC認定を受けることを推奨させ、精度の評価体制を強化した。

ジュネーブ・シール認定ブランドとして有名なのはヴァシュロン・コンスタンタンロジェ・デュブイだろう。前者は1901年に初めて取得して以降、多くのムーブメントがその認定を受けており、後者は1999年以降、すべてのムーブメントでジュネーブ・シールを取得している。かつてはパテック・フィリップも取得していたが、2009年に自社規格「パテック・フィリップ・シール」を制定後、すべてのモデルがそちらに移行している。なお、初めてジュネーブ・シールを取得したブランドはパテック・フィリップ製の懐中時計である。

検定条件

部品の製造から組み立てまでの工程すべてがジュネーブ市内で行われていること。

検定内容(ムーブメントの性能テスト)

ムーブメントをケーシング後、7日間にわたり精度を測定。ムーブメントによっては以下のような条件を課す。

・手巻きムーブメントの場合は24時間ごとに巻き上げる

・自動巻きムーブメントの場合は検定中、いかなる場合も手動で巻き上げてはならない

・クロノグラフ搭載ムーブメントの場合は最初の1日目に作動させる

日付表示、クロノグラフ、トゥールビヨン、リピーターなどの付加機能が搭載されている場合は、その動作テスト

パワーリザーブの測定

■防水性を備えている場合は防水性チェック

認定基準

■検定対象のムーブメントは構成する部品に指定した加工、装飾、仕上げが施されてあるか。

■7日間の精度測定で生じる誤差:±1分以内

■パワーリザーブは検定対象のムーブメントのメーカーが提示しているパワーリザーブと同等かそれ以上であること。

■防水性は最低限の3気圧防水(日常生活防水)を備えていること。メーカーが日常生活防水以上の防水性を提示している場合は、それ以上を備えていること。

ジュネーブ・シール取得モデル

■パテック・フィリップ「アニュアル・カレンダー 5396R-001」
(Cal.324S.QA.LU 24H)

■ロジェ・デュブイ「エクスカリバー スパイダー ダブルフライングトゥールビヨン スケルトン」 
(Cal.RD01SQ)

■ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ」
(Cal.5100)

■ショパール「L.U.C ルナ ワン」
(Cal.L.U.C 96.13-L)

マスター・クロノメーター

オメガがスイス連邦計量・認定局(METAS)と共同で制定した新しい精度認証。COSCがムーブメントの日常生活における姿勢や温度、平均日差をメインに検定を行うのに対し、マスター・クロノメーターは耐磁性能をメインに検定を行う。

2008年、オメガは自社のシグネチャーとして名高い傑作脱進機「コーアクシャル・ムーブメント」に初めて、磁気の影響を一切受けないシリコン製ヒゲゼンマイ「Si14」を搭載。これを皮切りにオメガはムーブメントの耐磁化を進め、2013年、ムーブメントのほぼ全体に独自の非磁性素材を採用することで1万5000ガウスの超高耐磁性能を実現したモデル「シーマスター アクアテラ 15000ガウス」(コーアクシャルキャリバー8508)を発表し、2014年には、この高耐磁性能を搭載したムーブメントを「マスター・コーアクシャル・ムーブメント」と名付け、搭載した「シーマスター 300 マスター・コーアクシャル」(マスター・コーアクシャルキャリバー8400)を発表した。

圧倒的な耐磁性能を有しているマスター・コーアクシャル・ムーブメントであるが、当時それを検査する装置や機関が存在しなかったため、ムーブメントの性能はブランドの自己申告のみで、第三者による明確な証明はされなかった。そこで、買い手に確実な信頼を得てもらうため、オメガは独立機関であるMETASと共同でムーブメントの耐磁性能を証明する検定を考案。2015年、耐磁性能に特化した規格「マスター・クロノメーター」が新設された。同時に同認証を初めて取得したモデル「コンステレーション グローブマスター」も発表された。

現在、オメガのほぼすべてのモデルが「マスター・クロノメーター」に認定されている。また、2021年にはチューダーがブランド初となるマスター・クロノメーターモデル「ブラックベイ セラミック」を発表したことで大きな話題を呼んだ。チューダーはこれ以降、全モデルの100%マスター・クロノメーター化を宣言。同ブランドの工場の一角にMETASのオフィスを構えるなど、その大望は実現しつつある。

現在、同認証を取得しているのは、チューダーとオメガの2社のみだ。

検定条件

■ムーブメントはC.O.S.Cの認定を受けていること。

検定内容

■テスト1。検定対象のムーブメントを2つの姿勢で1万5000ガウスの高磁場環境にさらす。

■テスト2。検定対象のムーブメントをケーシングし、同じく1万5000ガウスの高磁場環境にさらす。

■テスト3。時計を完全に巻上げ、2日にわたって、6つの姿勢と同じく1万5000ガウスの高磁場環境にさらし、帯磁状態と消磁状態においての平均日差を測定。

■テスト4。4日間にわたって、6つの姿勢と2つの温度(33℃、23℃)における、着用状態と外した状態での精度誤差の測定。

■テスト5。6つの姿勢における精度誤差の測定。

■テスト6。同じく6つの姿勢において、パワーリザーブ残量100%の時と33%の時の精度誤差の測定。

■テスト7。時計を完全に巻上げ、パワーリザーブの長さを測定。

■テスト8。時計の防水性及び、耐水圧チェック。

認定基準

■上述の8つのテストを全てクリア。

■平均日差:0~+5秒

マスター・クロノメーター取得モデル

■オメガ「コンステレーション・グローブマスター」
(Cal.8900)

■オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」
(Cal.3861)

■オメガ「シーマスター ダイバー 300M」
(Cal.8800)

■チューダー「ブラックベイ セラミック」
(Cal.MT5602-1U)

■チューダー「ブラックベイ 58」
(Cal.MT5400-U)

カリテフルリエ

スイス・フルリエに本部を置く財団「カリテフルリエ財団」(FQF)による認証。高級時計の技術的、及び審美的品質基準を定めるため、古くから高級時計の生産地として名高い同地に工房を置くショパール、パルミジャーニ・フルリエ、ボヴェが共同で2001年に同財団を設立、時計規格「カリテフルリエ」を制定した。

検定内容は「フルリテスト」と呼ばれる精度検定である。しかし、この検定を受けるにはいくつかの厳しい条件をクリアする必要がある。その中でも特筆すべきなのが、クロノ・フィアブルテストだ。クロノ・フィアブルテストはデュボア研究所(ラ・ショー・ド・フォンに所在する時計及び、様々な化学試験を行う研究所)が実施する時計の信頼性を対象にした試験であり、検定対象の時計はムーブメントをケーシング後、21日間にわたって6ヶ月分の使用感を再現した独自のエージングテストを行う。着用時を想定した動作はもちろん、プッシャーや回転ベゼルなどが備わっている場合、それらもテストの対象となる。その他にも耐磁テストや耐水性テスト、あらゆる状況を想定した耐衝撃テスト、日付表示やクロノグラフなど、付加機能の動作テストも行い、さらにはケースやブレスレットの耐蝕性、文字盤や針の耐候性、風防のサファイアクリスタルの耐擦傷性なども評価される。

このように長く、複雑な試験内容を有するクロノ・フィアブルテストであるが、これをクリアしただけではフルリテストを受けることはできない。前述したようにフルリテストを受けるには”いくつか”の厳しい条件をクリアする必要がある。クロノ・フィアブルテストはその内の1つでしかなく、その他にもC.O.S.Cの認定を受けていること、製造工程は全てスイスで行われていること、ムーブメントには財団が指定する装飾が施されていること、これらを全て満たして初めてフルリテストを受けることができるのだ。このフルリテスト自体の合格基準も日差0~+5秒とかなり高く設定されており、総じて専門機関が行う認証の中では最も認定難易度が高いとされている。

「フルリテスト」はロボットシュミレーターで行われ、歩度の変化はデジタルカメラによる人工視覚システムで分析される。GPS と連動した完全なコンピュータ制御であるが、着用者の日常を想定した動作(活動的な状況、極めて活動的な状況、静かな状況)を精密に再現することが可能となっている。

同認証は独立した技術委員会によって公平に執り行われ、スイス連邦政府やスイスの地域協会などの公的機関からも支持されていることによって独立性と公平性が保たれている。

検定条件

■ムーブメントはC.O.S.C認定に合格していること。

■構想・設計から組み立て・検査に至る時計の製造工程すべてがスイス国内で行われていること。

■ムーブメントはカリテフルリエ財団の審美的基準に沿った素材で製造され、指定された装飾技法、仕上げが施されていること。

■クロノ・フィアブルテストに合格していること。

検定内容

■上記の条件を満たした後、「フルリテスト」で24時間、精度測定を行う。(ケーシング済み)

認定条件

■「フルリテスト」での日差:0~+5秒以内

カリテフルリエ取得モデル

■ショパール「L.U.C カリテフルリエ」
(Cal.L.U.C96.09-L)

■パルミジャーミ・フルリエ「トンダ 39カリテフルリエ」
(Cal.PF331QF)

■ボヴェ「1822 アマデオ・フルリエ ライジングスター トリプルタイムゾーン トゥールビヨン」

「時計のマニアな知識 第一弾 時計規格 後編」に続く。

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